住職のブログ
土葬墓地問題 (住職のブログ)
2025/02/27 (木)
2月20日、宮城県議会において、イスラム教徒の土葬墓地問題が議論された。佐々木県議は県民の「土葬になじみがない」現状に鑑み、土葬墓地の県内整備に疑問を呈した。それに対し、村井知事は「それぞれの人が望む弔い方に対応する必要がある」と前向きな答弁を行い、他県の事例調査を行っていることを明かした。この議論の伏線は、河北新報2月6日付の記事「増えるムスリム望む土葬」が掲載され、全国の地図上に10ヵ所の土葬墓地が表示されていた、しかし、東北には1ヶ所もない。この現状を見ると、土葬墓地問題を議論するだけではなく、将来どこに設置するのか、早急に具体案を示すことが求められる。
宮城県は労働力不足を補うため、世界一イスラム教徒の多いインドネシアから、多くの労働者を受け入れる方針なので、土葬墓地の必要性が高まるのは自明である。イスラム教徒にとって、なぜ土葬墓地が必要なのかと言えば、イスラム法によって火葬が禁止されているからである。火葬率99.9%の日本において、土葬墓地設置のハードルは高い中、どのように住民の理解を得るのか、丁寧な説明が求められる。大分県日出町では、条件付きで土葬墓地を認めることになっていたが、昨年8月の町長選挙で設置反対派の町長が当選し、一転白紙にもどってしまった。この一件は、いかに地元住民の理解を得る事が難しいかを、如実に物語っている。
それでは、なぜ日本が世界一の火葬国になったのかと言えば、様々な理由があるが、宗教的問題がなかったことが大きい。仏教では、教祖であるお釈迦様が火葬され、その舎利が信仰の対象にされたので、火葬に対する忌避感がなかった。また、日蓮聖人も東京・池上で火葬され、山梨・身延山の御廟所に納骨されている。そして、舎利信仰の象徴である仏舎利塔は、全国各地にあり仙台でも国見峠に建立されている。このように、日本は火葬され舎利になる事が当たり前の社会なので、土葬に対し住民が拒否反応を示すのは、仕方のないことである。しかし、日本の法律「墓地埋葬法」では、土葬は禁じられていないので、悩ましい問題である。
当山近くの放山地区には、東北で唯一のイスラム教のモスクがある。金曜日には、お寺の下の国道を三々五々、礼拝に向かう姿をよく見かけるが、その熱心さには驚かされる。イスラム教は、偶像崇拝も禁止なので、仏像を壊すような狂信的なムスリムが現れないことを、願っている。
トランプ大統領の創り方 (住職のブログ)
2025/01/30 (木)
1月20日、ドナルド・トランプ大統領の第47代米国大統領就任式が、豪家メンバーを随え華やかに執り行われ、第2次トランプ政権が発足した。トランプ大統領は、就任式直後から矢継ぎ早に大統領令を連発し、国内外に波紋が広がった。トランプ大統領の特徴は、関税を武器に取引し米国に有利な条件を引き出すことである。早速、貿易赤字の大きなメキシコ・カナダには、25%の関税を検討していると脅した。このような交渉スタイルが、日本にどのような影響を及ぼすのか、石破首相の力量が試されることになる。トランプ大統領の再登場を考えると、盟友安倍元首相を失ったことは、返す返すも残念である。
トランプ大統領の発言や行動は型破りで、耳を疑うようなエピソードであふれている。そんな大統領がどのように創られたのか、その一端を描く映画が公開されている。昨年8月に米国で公開された時は、トランプ大統領が上映中止を求めた、いわくつきの映画である。その映画、「アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方」が仙台で上映されることになったので、先日50年ぶりに映画館に足を運んだ。それにしても、大統領選挙中に知られたくない若かりし時代を映画にするとは、米国はすごい国である。
この映画は、若きトランプ大統領が伝説の悪名高き辣腕弁護士、ロイ・コーンに弟子入りし、劇的に変貌する姿を描いている。コーン弁護士から、勝つための3つのルールを叩き込まれる。1.攻撃・攻撃・攻撃2.全否定で押し切れ3.決して負けを認めるな、この3つの教えは現在のトランプ大統領にも受け継がれている。コーンにとって、若きトランプはアプレンティス(見習い)であり、かわいい弟子であった。この映画は、トランプ大統領の「見習い」時代を強烈な映像で描き、見る者を引き付けると同時に、考えさせられる映画であった。
この映画の監督はイラン出身、トランプを演じた男優はルーマニア出身、妻を演じた女優はブルガリア出身と多彩で、さすが移民大国米国の面目躍如である。そして、トランプ大統領を知る上で、貴重な情報を与えてくれる映画で、一見する価値はある。
能登半島地震から1年 (住職のブログ)
2024/12/30 (月)
令和6年のお正月は、能登半島地震に始まり、正月を祝う気分にはなれなかった。当山では、新春初祈禱会が終わり、皆でお茶を飲んでいた時で、少しは揺れたがこんな大地震だったとは分からなかった。テレビを見て、初めて大きな被害が出ていることを知り、東日本大震災の記憶が蘇ってきた。東日本大震災は、津波による家屋倒壊だったが、能登半島地震は激しい揺れによる家屋倒壊であった。改めて、日本は地震大国であることを、思い知らされたお正月であった。
今年は、能登半島地震の大災害、8月には「南海トラフ臨時情報」が発表され、対応に戸惑った自治体や企業が多かった。一方、庶民は地震に備えるため米の買いだめに走り、米不足に拍車をかける結果となり、町中から米が消えてしまった。30年前の米不足は、自然現象の冷害によるものだったが、今回は人災で国の情報の出し方に問題がなかったか、検証が必要である。日本に住んでいる限り、地震から逃れることは出来ないので、地震対策は必要だがパニックが起きないような情報発信の仕方に、一工夫が必要である。「南海トラフ地震」がいつ起きるのか、心配の種は尽きない。
「南海トラフ地震」は、20年前に23万人の死者・行方不明者を出した「スマトラ地震」を超える死者・行方不明者が予想される巨大地震である。「南海トラフ地震」の参考になるのは、1707年の「宝永地震」だろう。この地震は、日本史上最大の大地震と言われ、関東から九州まで地震・津波が広範囲に及んだ、東海・東南海・南海の三連動地震である。その49日後には、富士山の大噴火で未曾有の大災害を引き起こし、江戸にまで火山灰が降りそそいだと言われている。近い将来に、起きるだろうと言われる「南海トラフ地震」は、日本にとって一大事、最大の関心事である。
能登半島地震から一年、被災地は高齢化・人口減少が進み、半島・軟弱地盤という今までにない難しい地域である。これまで以上の、行政・ボランティアの力が必要で、一日も早い復旧・復興を願っている。
「プレミア12」 (住職のブログ)
2024/11/27 (水)
11月24日、野球の国際大会「第3回プレミア12」の決勝戦が東京ドームで行われ、台湾が日本代表「侍ジャパン」を4対0で敗り、初優勝を飾った。「侍ジャパン」は、これまで国際大会27連勝であったが、ついに連勝記録がストップした。第1回大会は韓国、第2回大会は日本、第3回大会は台湾と優勝を分け合ったことは、アジアの野球界にとってプラスである。これから、お互い切磋琢磨してレベルアップしていければ何よりである。それにしても、台湾との決勝戦で完封負けするとは思いもよらなかった。「侍ジャパン」には、徳川家康の「勝つことばかり知りて、負けることを知らねば、害その身にいたる」の言葉を贈ろう。
今回の決勝戦は、台湾の快勝で終わったが、一つ気がかりなことがあった。決勝戦前の辰巳選手の「優勝しています。おめでとう」という摩訶不思議な声出しである。試合前に優勝したかのような声出しは、対戦チームを見くびり傲慢さを感じる、不愉快なものであった。こんな気持ちで戦えば、野球の神様に嫌われ「運」から見放されるのではないかと心配したが、悪い予感が当たり妙に納得した。辰巳選手のビックマウスは毎度のこととはいえ、対戦チームを見下すような発言は、「百害あって一利なし」である。
大谷選手は、2年連続の満票MVP受賞に際し、「ドジャースを代表してこの賞を頂いた」とコメントし、チームに感謝した。この謙虚さが、幸運をもたらしチームメイトから愛される理由なのだろう。野球は、個人でやるものではなく、チームでやるものだということを彼はよく理解している。大谷選手は、よくゴミを拾うことで知られているが、なぜゴミを拾うのかと言えば、それは「運」を拾うことに通じているからだと言っている。一見、「ゴミ」と「運」は無関係に思えるが、彼にとって「運」を呼ぶこむ大切な作法なのだろう。
大谷選手のWBCでの「憧れるのはやめましょう」は、対戦チームをリスペクトしチームを鼓舞する素晴らしい声出しであった。辰巳選手の「プレミア12」での声出しは、対戦チームに対するリスペクトに欠け、チームに戸惑いを与えるだけであった。辰巳選手には、大谷選手の思慮深さと謙虚さを、少しは学んで欲しいものである。